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千葉地方裁判所 昭和49年(わ)223号 判決

本籍

茨城県稲敷郡桜川村大字甘田一三二五番地

住居

千葉県習志野市藤崎二丁目一番三〇号

会社役員

坂本清

昭和三年四月四日生

本店所在地

千葉県習志野市藤崎二丁目一番三〇号

恒陽開発株式会社

住居

千葉県習志野市藤崎二丁目一番三〇号

右会社代表

坂本清

右被告人坂本清に対する所得税法違反、法人税法違反、被告会社恒陽開発株式会社に対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所はつぎのとおり判決する。

主文

1  被告人坂本清を懲役四月および罰金三〇〇万円に、被告会社恒陽開発株式会社を罰金一〇〇万円に各処する。

2  ただし、被告人坂本清に対しこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

3  被告人坂本清において右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(認定事実)

第一、被告人坂本清は千葉県習志野市藤崎二丁目一番三〇号に居住し、同所において不動産売買および売買の斡旋を業としているものであるが、所得税を免れようと企て、

(一)  被告人の昭和四六年分の実際所得金額は八、九八三、八二五円で、これに対する所得税額は二、四八〇、二〇〇円であるのに、販売手数料収入の全部および売上の一部を除外する等の不正手段により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年三月一五日千葉県千葉市新宿二丁目六番一号所在の千葉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、〇二五、四四〇円、これに対する所得税額は七二、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて昭和四六年分の正規の所得税額二、四八〇、二〇〇円との差額二、四〇七、四〇〇円をほ脱し、

(二)  被告人の昭和四七年分の実際所得金額は二五、〇六七、三二三円で、これに対する所得税額は一一、〇二二、〇〇〇円であるのに、売上の一部を除外して架空名義の預金を設定する等の不正手段により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四八年三月九日前記千葉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が八、二〇〇、四三三円、これに対する所得税額は一、七六七、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて昭和四七年分の正規の所得税額一一、〇二二、〇〇〇円との差額九、二五四、八〇〇円をほ脱したものである。

第二、被告会社恒陽開発株式会社は、千葉県習志野市藤崎二丁目一番三〇号に本店を置き、不動産の売買仲介等を目的とする株式会社であり、被告人坂本清は同会社代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、同被告人において被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、昭和四七年四月二七日から同年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は一三、二九四、八四三円で、これに対する法人税額が四、七二四、六〇〇円であるのに、売上の一部を除外する等の不正手段により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年一〇月二八日、前記千葉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、九二四、八四三円、これに対する法人税額一、二八六、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度の正規の法人税額四、七二四、六〇〇円との差額三、四三八、二〇〇円をほ脱したものである。

(証拠の標目)

第一の(一)の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告人に関する脱税額計算書(昭和四六年分)、修正損益計算書、修正貸借対照表、脱税額計算説明資料(昭和四六年分)、所得税額計算書(昭和四六年分)および昭和四八年八月三日付調査書

一、押収してある所得税確定申告書一枚(昭和四九年押第一八八号の一)、土地売買契約書六枚(同号の四、五、七ないし一〇)

第一の(二)の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告人に関する脱税額計算書(昭和四七年分)、修正損益計算書、修正貸借対照表、脱税額計算説明資料(昭和四七年分)、所得税額計算書(昭和四七年分)および昭和四八年八月三日付調査書

一、押収してある所得税確定申告書一綴(前同号の二)

第二の事実につき

一、登記簿謄本

一、大蔵事務官作成の被告会社に対する脱税額計算書、修正損益計算書、修正貸借対照表、脱税額計算説明資料および法人税額計算書

一、押収してある法人税確定申告書一綴(前同号の三)、メモ一枚(同号の六)、総勘定元帳一冊(同号の一一)

一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年七月二日付質問てん末書

全部の事実につき

一、大蔵事務官作成の昭和四八年八月八日付調査書

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(昭和四八年五月二五日付、同年六月一一日付、同月二五日付、同月二六日付、同年七月一二日付、同年八月八日付)および検察官に対する供述調書三通

(法令の適用)

被告人坂本清の第一の(一)、(二)の各事実はいずれも所得税法二三八条一項に、第二の事実は法人税法第一五九条一項(懲役刑選択)に、被告会社恒陽開発株式会社の第二の事実は同法一六四条一項に該当する。

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(被告人坂本清につき、第一の(二)の罪の刑に決定の加重をする)。同法二五条一項(主文2)。同法一八条(主文3)。

公判出席検察官 黒崎兼作

同 弁護人 土屋英夫

(裁判官 新谷一信)

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